登山の魅力
20代のころは夏山に登ったことがあり、落ちついたらこれにも、もう一度取り組んで見たいですね。
若い頃の話ですが、触れておきたいと思います。
一度も経験したことのない方に向けて、私が若い頃に体験した山の魅力を記してみます。
当時、使っていたワープロのフロッピーが見つからず、話は途中からですが、見つかったら随時追加していきます。


<この写真は西穂高に登った時のもの>
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燕岳〜大天井岳〜槍ヶ岳(表銀座コース)(上)
北アルプスの縦走でおもしろいのは表銀座と言われるコースである。
このコースはあまりにも有名すぎて熟練者からみれば、物足りないかもしれない。
しかし、私にとっては、初めての縦走体験であり記憶の中に最も大切にしておきたいコースである。
中央本線の松本駅で降りて信濃大町線に乗り換え、穂高駅で降りる。
当時の穂高駅は丁度、新垂井駅のような小さな駅であった。
田園の中の駅に降り立ち、バスを待つ。
太陽は頭の真上にあり、遠くから暑苦しいようにセミの鳴き声が聞こえてくる。
真っ青な空の中には白い入道雲がモクモクとして鎮座している。
13:00、穂高駅発のバスに乗る。
田園風景の中を、熱気とともに道路のほこりを舞い上げてバスは走る。
一瞬、小さい頃、一ノ瀬橋から田んぼの中の道をトラックがホコリを舞い上げて走ってくるのを
牧田の小学校のグランドから見ていた頃の記憶と重なった。(岐阜県養老郡上石津町牧田とは私が生まれた所)
約1時間で中房温泉に到着。
温泉と言っても、小さな風呂小屋があるだけであった。
ここが、出発点となり、いきなり草深い山の中を登ることになる。
無人の小屋で登山届けを出して、登りはじめる。いきなり急な坂道をあえぎながら登る。
縦走において、一番しんどいのがこの最初の登りである。
体が慣れていない間に、一気に2500mを登り切らなくてはならないからだ。
途中、八合目あたりで合戦小屋に到着、小休止。
ここはまだ、木立に囲まれて回りの景色は見えない。
再び登りはじめる。
合戦小屋から先は登りは比較的ゆるやかになるとともに、周りは木立の丈が低くなっていく。
最後の急な登りを過ぎると、突然目の前に草木のないなだらかな丘に出る。
そこは、燕岳の頂上。
遠く槍ヶ岳を望み、赤牛岳、双六岳の一大パノラマに声が出ない。
丘には花崗岩の白い岩が所々露出しており、茶と白のコントラスト、所々に草花の緑。
そして、遠くの黒い山肌、夕焼けのオレンジ、
頭の上はダークブルーの雲一つない空が絶妙の調和をしており、
なんとも形容しがたい素晴らしい世界を構成していた。
リュックを下ろし、周りの景色に酔いしれる。
夕日を背にすると遠くの山にかかった雲に光の輪ができ、その中に自分の影が映っていた。
"ブロッケン現象"である。
山荘に宿泊の手続きをして小屋の中にある食堂にいってみた。
ログハウスの小屋の隅のテーブルについて、窓から夕焼けの北アルプスの山並みをコーヒーを飲みながら...
バッハのブランデンブルク協奏曲の中、暗くなるまで、いつまでも、いつまでも眺めていた。
8:00過ぎ、
皆が外に出ているのでいってみると、頭の上には満天の星が無数に輝いていた。
ここで見る星の数は、地上で見るのとは桁違いに多い。
今まで下界で見ていた星はかなり明るい星であることをはじめて知った。
それは、まるで黒いお盆の上に、真っ白な砂糖を蒔いたようだ。
暗い山の稜線に目をやると、夜空は黒ではなくまだ青く透き通っていることが分かった。
黒い稜線の先には、小さなとんがりが見える。『槍ヶ岳』である。
岩に腰掛けて夜空を見ているとスーと流れ星が.....ハッキリと見えた。
20分ほども見上げていると1〜2回は見ることができるそうだ。
9:00には消灯、
発電機が止まるため小屋に入って眠りにつく。
押し入れのように区切られた中で寝返りもままならない状態でいつのまにか寝てしまった.........。
6時に起きると、
部屋でまだ寝ている人は4〜5人で大半の人はすでに外に出て散策を楽しんでいた。
食事を済ませてから、散策に出る。空は雲一つなく真っ青。
『なんて気持ちがいいんだ』
下界でのことは全く頭の中にはない。
将来、何とか機会を作って是非もう一度いや何回でもここに戻ってきたいと思ったのでした。
このような山の経験をしてからは、日常の目の前のできごとがどうでもよいような小さなことばかりで
あったことに気が付いた。
悩んでいるそこの人!! 山に登るべきだ!!
次はいよいよ槍ヶ岳までの縦走です。.........<小休止>
燕岳〜大天井岳〜槍ヶ岳(表銀座コース)(下)
あまりにも感激的だった燕岳、
心は残るものの今日の目的地"槍ヶ岳"に向かって朝7時に歩き始める。
今日は、いよいよ槍ヶ岳までの縦走になる。
本当にあの針の先のように尖った頂上までのぼれるだろうかと不安になるが、
歩きはじめると体調は極めて好調であることに気がついた。
昨日は3〜4時間ほどで約2500mを登ったため、非常にきつかったが、
そのお陰で今日は多少のアップダウンにも体がついていける。
足も背中の荷物の重さもあまり気にならずに周りの壮大な景色を楽しみながら稜線を歩く。
一定のペースで歩きながら真っ青な空の下、
リュックの重さも楽しみの一つになるほど全身が自然の中にいる快感でいっぱいだった。
『生きている』
と感じる心地よい疲労感を身体中に感じて歩く、一歩一歩が楽しくて楽しくてしょうがない。
今思うと、体が『生き物』として100%満足してくれていた頃であった。
11:00ころに大天井岳を過ぎる。
小林喜八翁のレリーフが岩肌に埋められているところで一服。
目的地の槍ヶ岳は、その形を確実に把握できる大きさまでになっていた。
丁度、12時ころに大天井小屋に到着。
昼飯を食べていると、小屋の主人が他の登山者に
"さきほど、槍の方で滑落者があり、ヘリで下に運ばれたそうだ"
と話していた。
今までの気持ち良さはどこへやら"そうか、やはり落ちる人がいるんだ"
と、あたりまえのことを思いつつ気を引き締めた。
大天井小屋を出るとすぐに20mほどのガケを垂直の鉄ハシゴだけで降りることになる。
20Kgほどのリュックを担いで、この高さを垂直に降りるのにはかなり勇気がいった。
私は高所恐怖症である。
いまさら戻る訳にもいかない、降りる以外にしようがなかったって訳だ。
さて、その後は、登り下りの連続で徐々にではあるが、登っていっているようである。
目の前の槍は、次第次第に目の上の槍にと姿を変えていく。
3時間ほどでどうにか槍ヶ岳ヒュッテにたどり着いた。
と言っても、槍ヶ岳ヒュッテは目的地の槍ヶ岳山荘ではない。
槍ヶ岳山荘はそこから先さらに、500mほど登らなくてならない。
決して急な登りではなく、なだらかな登りであり、
辺りは360°の展望で目の前に槍ヶ岳がそそり立っている。
槍ヶ岳ヒュッテで10分ほど休憩をしてから、
さあ登ろうとリュックを担いだまではよかったが....、
『歩けない!!』、本当に歩けないのだ。
立っているのがやっと、体が極度に疲れているためになだらかな坂でも足が前へ出ないのだ。
どうも、休んだのがかえっていけなかったらしい。
どうにか、気力で一歩前に踏み出す。
しかし、次の一歩を前に出すのにまた気力を振り絞らなければならなかった。
もし、倒れでもすれば起き上がることができないと思えた。
一歩一歩がなかなか進まず、目の前の槍ヶ岳山荘までが遥か彼方に思えた。
やっとの思いで槍ヶ岳山荘についたのはpm5:00。
荷物を山荘に預けると体が軽くなり、さきほどの疲れが気になるが明日の天気がどうなるか
わからないため、思い切って槍ヶ岳の先端まで登ってしまうことにした。
槍ヶ岳の先端は、槍ヶ岳山荘より50mほどの高さがある。
ほとんど垂直に登ることになるが、大きな岩と岩の間を縫うようにして登るためさほど難しくはない。
僕が登るのとすれ違いに小学校3〜4年生と思われる子供が降りてきた。
頂上は10〜20畳ほどの広さであり、祠に槍が祭ってあった。
そこは大槍と呼ばれている。
当然小槍があるわけで、大槍から小槍を見下ろすことになる。
槍ヶ岳山荘は北アルプス中で最も大きな山荘である。
食堂はかなり大きく、たしか100名ほどが一度に食事できたと思う。
槍ヶ岳に登るには、僕が縦走したコースの他に上高地側からのコースがある。
上高地からのコースはかなりだらだらした登りが続くことになるが、
危険な箇所はほとんどなく、より初心者向きと言える。
翌日の帰路はこのコースを上高地まで降りることにした。
穂高への挑戦
朝早く出発したものの、一歩一歩登るうち、ふと気が付いて時計を見ると10時になっていた。
大きな岩に腰掛けて一服。下をみると出発した涸沢テント場が見える。
頭上からは、強烈な太陽が照り付けるものの風が涼しく気持ちがいい。
壮大な景色を見ながら、無心になって体を休める。「あーあ、来てよかった」
爽快な気持ちで再び登り始める。
しかし、もう今までの登りではなく大きな石の間を縫うようにして登る。
しばらく、登ると目の前に2階建の家ほどもある大きな岩が進路をふさいでいた。
その岩には鉄製のはしごが掛かっており、はしごを使って岩を乗り越えるのである。
高さは10mもあろうか。
平地での10mなら、なんとか登れるがそこは、すでに急な山の中腹である。
はしごを途中まで登ると、はるか下の方が丸見えになり。足がすくんでしまった。
しかし、途中で引き返すわけにもいかない。下には、次の登山者がはしごを登りはじめている。
思い切ってはしごを登りきると、今度は大きな岩の背中にあたる部分となり、
しかも20〜30度の傾斜が20mほど続いている。
40〜50畳はあろうかと思える広さであり、手掛かりは何もない。
太い鎖が手前から向こうへかけられており、鎖を引っ張るようにして傾斜した大きな岩肌を登っていくのである。
足をすべらせたら、滑り落ちて数十m下の岩に叩きつけられることになる。
どうにか、乗り越えてしばらく登ると急に雲海が目に飛び込んできた。
「北穂の頂上だ!!」
北穂高の頂上では、あちらこちらで皆が休憩をしている。
今登ってきた反対側はほぼ垂直の崖になっており、
縁からおそるおそる顔をのぞくと、そこは、数百mの断崖絶壁であった。
軽い昼食を済ませて、あたりを見回すと数m下に屋根らしきものがあるので、行ってみると北岳小屋である。
数百mの断崖絶壁にチョコンと立つ、素晴らしい眺望が得られる小屋であった。
景色を十分満足して、いよいよ今日の目的地の穂高岳山荘に向けて出発。時計を見ると2時少し前。
これからは、鋭くとがった岩の間をジグザグしながら慎重に登る、足を滑らせば取り返しがつかない。
慎重に!慎重に両手と足で四つんばいになりながら登る。
必ず、両手は岩をつかんでいないと、リュックの重みで重心がくずれてバランスを失う。
そうなったら、もう終わりである。
慎重にゆっくりゆっくりと登り続ける。
どれくらい経っただろうか、辺りは雲の中、今自分がどちらに向かっているのか解らなくなってきた。
そして.............なんと雨が降ってきたではないか。
雨で塗れた岩肌は滑りやすい。しかも、雨は雷を連れてくる。
早速、体の安定を確保しながらリュックからラジオを取り出してスイッチを入れると、
バリバリバリとノイズが入った。
自分が置かれている立ち場がわかると「これはヤバイ!」
今いるのは頂上、そう、上高地の駐車場から見ると三つ並んだ稜線の頂上にいる。
下手に動くと滑落しかねない。じっとしていると、雷がさらに近づいてくることも考えられる。
「ここで動かないほうがいいかも」と思った途端、すぐ後ろからきた人が、
僕の体を乗り越えるようにして追い越しながら、「ここにいないほうがいいよ」と言ってくれた。
思い切って、濡れた岩肌に注意しながら、また登り始める。
目の前の岩を乗り越える時、自分の足の下はるかかなたに雲海が一瞬見えた。
「ここでもし落ちたら。。。」 頭を振って、なにも考えないようにしながら登り続ける。
いつの間のか、雨は止んで、辺り一面真っ白。ガスってなにも見えない。
登りは終わり、徐々に下りはじめているのに気が付いた。足場も広くなり 「なんとか峠は越えたかな」。
しかし、今度はガスのためにどちらに向かっているのかわからない。
時々薄れたガスの向こうの石に印されている白い○を見つけながら歩く。
しかし、本当にこの方向でいいのかな? 自信がないものの目印を目当てに歩くしかない。
心細くなってきたころ、バババババババとかすかに音....。耳を凝らして聞くと。。。。。。。。
発電機の音であった。と同時にガスの合間に赤色の屋根が.......
「穂高山荘だ!!!」 次回に続く。。。。

